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相続は越谷の美馬克康司法書士・行政書士事務所 相続ガイド《相続とは》

相続越谷春日部の美馬司法書士行政書士(せんげん台駅1分/土日祝営業)

相続とは

相続とは、亡くなった方の財産を配偶者や子などが相続人となって引き継ぐことです。相続は被相続人が亡くなったことにより当然に発生し、自動的に相続人に受け継がれることを意味しますが、相続人が複数人いたり、相続財産がプラスの財産だけでなく負債などのマイナスの財産も対象となります。相続の手続きは相続人にとって大きな負担となる場合もあるため、早めに取り掛かることが重要です。

01相続とは

相続とは

相続の開始と場所

第882条 相続は、死亡によって開始する。

相続とは、亡くなった方の財産を承継することです。相続の原因は死亡によるのみで、隠居(生前に財産を譲渡するための旧民法の制度)による相続はありません。

生死不明の者に対する失踪宣告は、失踪者を死亡したとみなすことで相続が開始されます。認定死亡(生死を確認できない場合に、行政が死亡したと認定する制度)を受けた者も相続が開始されます。

第883条 相続は、被相続人の住所において開始する。

相続が開始する場所についてを規定しています。相続が開始される場所は、被相続人の財産の所在地などに関わらず、死亡当時の住所です。相続に関する手続きや紛争の裁判管轄を統一する目的で規定されています。たとえば、埼玉県で暮らす者が北海道で死亡した場合、相続は所在地である埼玉県で開始されます。

相続回復請求権

第884条 相続回復の請求権は、相続人又はその法定代理人が相続権を侵害された事実を知った時から5年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から20年を経過したときも、同様とする。

相続回復請求権の意義

本条は、相続回復請求権が5年または20年の制限があることを規定しています。相続回復請求権とは、相続人ではない者が相続財産を占有している場合に、真正の相続人が相続人としての法的地位を回復するための制度です。

原告と被告の適格

相続回復請求権の原告適格を有しているのは、相続権を侵害されている真正の相続人です。相続回復請求の相手方は、相続回復請求をされることによって有利であるという考えもできます。判例では、表見相続人は、自らが相続人ではないことを知っているか、または相続権を有する根拠がないと認識しているとき、その表見相続人に対する請求は本条の消滅時効に服しないとしています(最大判昭和53年12月20日)。さらに、表見相続人によって排除された共同相続人が、共有持分の登記を求める請求も、本条の相続回復請求であるとして、次のように運用されています。

  1. 財産を支配している一部の共同相続人が、他にも共同相続人がいることを知っていて、相続財産のうち一部の者の本来の持分を超える部分が、他の共同相続人の持分であると知りつつ、本来の持分を超える部分も自分の持分だと主張していた場合には、相続財産を支配している共同相続人に対する請求は、相続回復請求権にあたらない。
  2. 相続財産を支配している共同相続人が、他にも共同相続人の存在を知らずに、明らかな相続人である事由がなく、本来の持分を超える部分も自分の持分だと主張していた場合も相続回復請求権にあたらない。

別の判例では、他の共同相続人の存在を知らず、善意かつ合理的事由があったことの主張と立証責任は、相続侵害の開始時点であるとしています(最一小判平成11年7月19日)。

表見相続人から相続財産を譲り受けた第三取得者に対する請求が、相続回復請求権にあたるかは明確ではないとされていますが、旧民法下の判例で、相続回復請求権にあたらないとされました(大判昭和4年4月2日)。相続回復請求権にあたらない場合、第三取得者へ相続財産を譲渡した表見相続人が、善意かつ合理的事由がなかったとして時効を援用できない場合に、第三取得者も同様に援用できないとしています(最三小判平成7年12月5日)。

相続回復請求権の時効

相続権を侵害された事実を知った時とは、真正相続人が、自分が真正相続人であり相続から排除されていることを知った時点です。つまり、相続を知っただけではなく、自分が相続人であることを知り、さらに相続から排除されていることを知らなければなりません。

また、相続が開始になった時点から20年が経過すれば、相続権を侵害された事実を知っているかどうか、の問題は関係なく、相続回復請求権は時効となって消滅します。

表見相続人の取得時効

表見相続人は消滅時効の期間が進行している間の取得時効(権利を取得すること)を否定した判例がありますが、現在では、取得時効を肯定した見解も有力です。

02相続の効力

相続人は原則として被相続人のすべての権利義務を承継すること、および共同相続の関係についてから、一定の割合に一定の相続財産の価額を乗じた一定の数値の算出手順、さらに遺産分割の方針と方法についての規定を解説いたします。

相続の一般的効力

第896条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

相続人は相続が開始すると、被相続人の財産について、すべての権利義務を相続します(包括承継といいます)。すべての権利義務というのは、預貯金や不動産はもちろん、被相続人に借金があった場合に、借金を弁済する権利義務も相続するということになります。さらに、財産法上の法的地位やそれにかかわる事情も含まれます。たとえば、売買契約の売主で契約の債務を果たしていなかった場合に、相続人は契約上の地位を承継して、売主として買主との関係を引き継ぎます。

ただし、権利義務の性質上、被相続人しか持つことができないもの(被相続人の一身に専属したもの)は、権利義務から除かれます。被相続人しか持つことができないものとは、親権や扶養義務、代理権、雇用の権利や義務、資格、生活保護の権利、公営住宅の使用権などです。

なお、ゴルフクラブの会員権の扱いは、会則などに会員としての相続に関する規定がなくても、会員としての地位の譲渡に関する規定がある場合には、その規定に準じた手続きによって、会員としての地位を承継できるという判例があります(最三小判平成9年3月25日)。

被相続人の死亡を原因としても契約または法の規定によって相続人である者が固有の権利として取得するものは、本条の一切の権利義務に含まれません。なぜなら、固有の権利は相続財産ではないからです。

死亡退職金や生命保険

そこで問題になるのは、死亡退職金や生命保険などです。

死亡退職金とは、従業員の死亡に際し勤務先から支払われる退職金ですが、受け取る権利を持つ者の範囲や順位が定められています。判例では、勤務先の規定に基づいて支給された死亡退職金について、受給者である遺族が自己固有の権利として取得するとしました(最一小判昭和55年11月27日)。また、退職金支給の規定がない財団法人が支給した死亡退職金についても、財団法人の規定に基づいて支給同様に受給者である遺族が自己固有の権利として取得するとしました(最三小判昭和62年3月3日)。

生命保険については、保険金の受取人を遺族のうちの特定の者が指定されていた場合には、その指定された者が固有の権利として生命保険金を取得します。判例で、生命保険金の受取人に『相続人』という指定があった場合にも、相続人は固有の権利として生命保険金を取得しています(最三小判昭和40年2月2日)。このとき、相続人が複数あった場合に、『相続人』という指定は民法427条にいう『別段の意思表示』にあたるとして、各相続人は相続分の割合によって保険金請求権を取得するとしました(最二小判平成6年7月18日)。

また、保険金受取人の指定がされていない損害保険契約で『保険金受取人の指定がないときは、保険金を被保険者の相続人に支払う』という旨の約款条項により保険金が支払われた判例(最二小判昭和48年6月29日)がありますが、受取人は原則、固有の権利として保険金を取得すると解されています。

債務

債務は権利義務の典型で、承継されるのが原則です。金銭消費貸借上の債務者の負う債務のみではなく、保証債務(債務者がその債務を履行しない場合に、代わってその責任を負う保証人の債務)もこの原則に適用されます。

なお、2017年に債務法が以下のように改正されています。

  1. 限度額の定めがない個人根保証契約(個人が一定の範囲に属する不特定の債務を包括的に保証するもの)は無効
  2. 限度額の定めがある個人根保証契約も「主たる債務者または保証人が死亡したとき」に元本が確定するとされた結果、個人根保証契約にあっても、保証人が死亡した場合には、死亡の時点で保証債務の内容が確定する

また、身元保証についても、身元保証人としての地位は原則として身元保証人=被相続人の死亡によって消滅という判例があります(大判昭和18年9月10日)。この結果、相続人は、身元保証人=被相続人の死亡時にすでに保証債務が生じていた場合に、その債務についてのみ承継することになります。

03共同相続の効力

共同相続の効力

第898条 相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。

本条は、相続の開始から遺産分割までの共同相続人間の関係についてを定めています。

相続人が一人の場合は、被相続人の相続財産は単独で承継します。しかし相続人が複数人いる場合には、相続財産を全員が共有することになります。

遺言を残さなかった場合や遺言に残されていない相続財産がある場合は、遺産分割協議という相続人間での話し合いをすることになります。

相続財産の管理

共同相続財産の管理は、以下のような物権編の共有の管理規定によります。

  1. 相続財産の保存行為は各相続人が単独ですることができる
    保存行為とは、財産の状態を維持する行為のことです。たとえば、家屋の修理費や諸経費、相続人全員を名義人とする不動産登記、金融機関への被相続人名義の口座に関する取引経過の開示請求などです。
  2. 各相続人は相続財産の全部について、相続分に応じた使用ができる
  3. その他の管理に関しては、相続分の割合にしたがい多数決で決定する
    その他の管理とは、財産を利用・改良する行為のことです。たとえば、資料の取り立て、賃借契約の解除などのことです。
  4. 相続財産に変更を加え、または処分する場合には、他の相続人の同意を得る必要がある管理にかかる費用は相続分に応じて負担するものとされる
  5. 管理にかかる費用は相続分に応じて負担するものとされる

※ただし、すべてにおいて物権編の共有の管理の規定にしたがうというわけではありません。

遺産分割協議が終わるまでの間、土地や不動産などについて費用がかかったり、保険料や修理費などの諸経費が発生したりする場合があります。そのような場合の管理について、共同相続人間でスムーズに合意ができれば問題ありませんが、なかなか合意ができない場合にどう精算するかが問題になります。

相続財産に関する費用というのは、民法885条で規定されています。

第885条 相続財産に関する費用は、その財産の中から支弁する。ただし、相続人の過失によるものは、この限りでない。

相続財産に関する費用は、前述と重複しますが、固定資産税、火災保険料、修繕費、遺産の保全費用、鑑定費用などが含まれます。通常、相続財産を承継した相続人が、どう支払いをするかを決定します。しかし、相続放棄や限定承認の場合に、相続人が存在しない相続財産となり、それら費用を支払う人がいない状態になります。その場合に、相続財産から費用を支払うというのが本条の規定です。

そのため、相続人が複数ある場合には、相続財産に関する費用を支払った相続人が、他の共同相続人に対し費用の償還請求をすることができます。

参考(物権編の共有の規定)

少し長いですが、物権の共有の第251条から第253条を掲載します。

第251条
1.各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
2.共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、当該他の共有者以外の他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。

第252条
1.共有物の管理に関する事項(次条第一項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第1項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。) は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。
2.裁判所は、次の各号に掲げるときは、当該各号に規定する他の共有者以外の共有者の請求により、当該他の共有者以外の共有者の持分の価格に従い、その過半数で共有物の管理に関する事項を決することができる旨の裁判をすることができる。
(1)共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。
(2)共有者が他の共有者に対し相当の期間を定めて共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにすべき旨を催告した場合において、当該他の共有者がその期間内に賛否を明らかにしないとき。
3.前二項の規定による決定が、共有者間の決定に基づいて共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。
4.共有者は、前三項の規定により、共有物に、次の各号に掲げる賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(以下この項において「賃借権等」という。)であって、当該各号に定める期間を超えないものを設定することができる。
(1)樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃借権等 十年
(2)前号に掲げる賃借権等以外の土地の賃借権等 五年
(3)建物の賃借権等 三年
(4)動産の賃借権等 六箇月
5.各共有者は、前各項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。

第253条
1.各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。
2.共有者が一年以内に前項の義務を履行しないときは、他の共有者は、相当の償金を支払ってその者の持分を取得することができる。

04祭祀に関する権利の承継

祭祀財産の承継

第897条
1.系譜、祭具および墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って、祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
2.前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。

1947年に家督相続制が廃止され、祭司に関しては平等相続の督促が定められました。系譜、祭具、墳墓、を相続財産からはずし、一般の相続とは区別して承継者を定める規定です。

系譜先祖から子孫に至る一族代々の図表である家系図
祭具位牌、仏壇、仏像、神棚、神体、神具、仏具、庭内神祠などの祭祀や礼拝に用いる器具や道具
墳墓墓地、墓石、墓碑など
系譜、祭具、墳墓について

本条は、系譜や祭具、墳墓などの祭祀財産は、被相続人が暮らしていた環境の慣習によって、承継する人を決定することを規定しています。ただし、被相続人が遺書を残すなどして祭祀財産を承継する人を指定していた場合は、指定された人が承継します。指定された人は、原則断ることができませんが、他の人に権利を譲ることはできます。遺言がなくても、口頭や書面などの生前行為でも差し支えないとされています。

慣習による決定は実は少ないケースです。その地域の慣習や属した職業などの慣習を明らかにすることが難しいためです。

さらに二項では、遺言書による指定がない場合、暮らしていた環境の慣習が明らかでない場合、祭祀財産を引き継ぐ人は家庭裁判所が決定することになります。家庭裁判所で「祭祀継承者指定の申立て」という手続きで祭祀財産を引き継ぐ人が決定します。

家庭裁判所は、被相続人との関係や祭祀財産を引き継ぐ意思や能力があるかなどを基準に調停がなされるようです。たとえば、長男であるとか、氏(苗字)が同じであるとか、親族かなどを問うのではなく、生活上の関係や、これまで墓地を管理していたかなどが重視されています。

なお、祭祀財産を承継するのは一人とは限りません。複数人で分けた判例も存在しました(東京高判昭和62年10月8日)。系譜と墳墓を別々に承継するというような分け方です。

祭祀財産を承継した者の地位

祭祀財産を承継した人に祭祀を行う義務が生じるわけではありません。通説では、祭祀財産の承継に承認や放棄の概念がありませんので、前述した通り、断ることができず辞退するなどができません。ですが、承継した後に、祭祀財産の処分は承継した人の自由です。

遺体・遺骨の承継

祭祀財産である墳墓に埋葬された遺体や遺骨は、祭祀を主宰するべき者に帰属する、と祭祀財産に含まれる判例があります(最三小判平成元年7月18日)。これに対し、通説は被相続人の遺体・遺骨の帰属について、慣習に基づいて喪主に帰属するという原始的な考え方もあるのは確かです。

05相続分

相続分とは

第899条 各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。

本条は、相続人が複数人いる場合において、各相続人が持つ権利義務の割合を定めたものです。つまり相続分は法定相続分という理解です。相続人が複数人いるとき、相続人を共同相続人といいます。

共同相続人の権利義務

不可分債権・不可分債務

たとえば1枚の絵は性質上、分けることができません。このように性質上不可分である債権義務については、共同相続人に分割帰属をしないと理解されています。

可分債権・可分債務

金銭債権・債務のような分けることができる可分債権は、相続開始とともに共同相続人間で法定相続分の割合で分割され、遺産分割の対象とはしないという考えが多いです。これに対し、可分債権・可分債務が分割されると相続債務者・相続債権者の不利益になる恐れがあるため共同相続人間で不可分債権・不可分債務になるという考えもみられます。

ですが、近年は最高裁が、預貯金債権の他に定期預金債権や定額郵便預金再建、株式・委託者指図型投資信託の契約にもとづく受益権・外国投資信託にかかる契約にもとづく受益権・個人向国債などを例外として認めています。

なお、預貯金債権が分割の対象と理解された時期から、分割をする前の払い戻しについて、これまで銀行実務は無権利者への支払いがないようにするために、共同相続人全員からの請求が必要としてきました。しかし、2018年の改正により預貯金債権の一部に限り、相続人が単独でも権利を行使する余地が認められました。

第909条の2 各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の3分の1に第900条及び第901条の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた(標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする。)については、単独でその権利を行使することができる。この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす。

連帯債務

第三者の金銭債務について、連帯債務者となった者が死亡し、その連帯債務が共同相続された場合も、相続人たちは分割された債務を承継して、各自承継した範囲で本来の債務者と共に連帯債務者になると解釈されていますが、本来の債務者と各相続人との間に債務額が異なる連帯債務が生じたり、共同相続人の間に連隊関係を認めないかという法律上の問題が生じたりするため批判的な考えも存在しています。被相続人が負担していたのと同様に連帯債務を共同相続人が不可分的に負担すると解釈するケースが多いのが現状です。

金銭

金銭と金星債権は区別しています。金銭は非相続人の死亡によって共同相続人の共有財産となります。相続人は非相続人の残した遺産に法定相続分に応じた持分権を取得するのみで、金銭債権のように相続分に応じて分割された額を承継するものではありません。それがもし相続開始後に現金が金融機関に預けられて債権化されても、相続開始時にさかのぼり金銭債権となるものではないため、遺産分割をするまでの間には自己の相続分に相当する金銭の支払いを求めることはできません。

06法定相続分1

法定相続分

第900条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めることによる。
 一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各2分の1とする。
 二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、3分の2とし、直系尊属の相続分は、3分の1とする。
 三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、4分の3とし、兄弟姉妹の相続分は4分の1とする。
 四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1とする。

本条は相続財産の取り分の目安となる法定相続分についてを規定しています。平成25年の改正前までは、「嫡出でない子」の相続分が「嫡出の子」の相続分の半分であると規定していましたが、憲法14条(いわゆる法の下の平等についての規定)との関係から争われており、最高裁はそのような相続分に関する規定は違憲だと判断し改正されました。

法定相続分は、法定相続人の組み合わせによって変わります。次の表がわかりやすいのでご覧ください。

法定相続人法定相続分
配偶者と子配偶者は2分の1子は2分の1
配偶者と親配偶者は3分の2親は3分の1
配偶者と兄弟姉妹配偶者は4分の3兄弟姉妹は4分の1
配偶者のみすべて
子のみすべて
親のみすべて
兄弟姉妹のみすべて
法廷相続分

子や親、兄弟姉妹が複数人いる場合には、その人数で割って均等にします。

相続人:配偶者と子

配偶者の相続分は2分の1、子の相続分は2分の1です。子が複数人いる場合は、子全員で2分の1を取得し、各人で均等に分けます。子の男女の別や実子と養子の別、国籍の有無を問うことなく均分されます。

相続人:配偶者と子の例1

相続人:妻Aと子B・C 相続財産3,000万

妻A3,000万 × 2分の1 = 1,500万
子B3,000万 × 4分の1 = 750万
子C3,000万 × 4分の1 = 750万

相続人:配偶者と子の例2

相続人:妻Aと子B・C、不倫相手との子D 相続財産3,000万

妻A3,000万 × 2分の1 = 1,500万
子B3,000万 × 6分の1 = 500万
子C3,000万 × 6分の1 = 500万
子D3,000万 × 6分の1 = 500万

相続人:配偶者と直系尊属

直系尊属の相続分は3分の1、配偶者の相続分は3分の2です。直系尊属が複数人いる場合は、3分の1を取得し、各人で均等に分けます。父母が相続人になる場合、実父母や養父母は関係ありません。父母がいない場合に祖父母が相続人になります。

相続人:配偶者と直系尊属の例1

相続人:妻Aと被相続人の父母B・C 相続財産3,000万

妻A3,000万 × 3分の2 = 2,000万
被相続人の父B3,000万 × 6分の1 = 500万
被相続人の父C3,000万 × 6分の1 = 500万

相続人:配偶者と直系尊属の例2

相続人:妻Aと被相続人の父母B・C 相続財産3,000万

妻A3,000万 × 3分の2 = 2,000万
被相続人の父B3,000万 × 6分の1 = 500万
被相続人の母C3,000万 × 6分の1 = 500万

相続人:配偶者と兄弟姉妹

兄弟姉妹の相続分は4分の1、配偶者の相続分は4分の3です。兄弟姉妹が複数人いる場合は、全員で4分の1を取得し、各人で均等に分けます。父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1です。ここでいう父母には、養父母も含みます。実父母あるいは養父母のどちらかを同じくすれば、全血の兄弟姉妹となります。一方の実父母が他方の養父母である場合も同じです。

相続人:配偶者と兄弟姉妹の例1

相続人:妻Aと被相続人の兄B・妹C 相続財産3,000万

妻A3,000万 × 4分の3 = 2,250万
被相続人の兄B3,000万 × 8分の1 = 375万
被相続人の妹C3,000万 × 8分の1 = 375万

相続人:配偶者と兄弟姉妹の例2

相続人:妻Aと被相続人の兄B・被相続人とは異母の妹C 相続財産3,000万

妻A3,000万 × 4分の3 = 2,250万
被相続人の兄B3,000万 × 6分の1 = 500万
被相続人とは異母の妹C3,000万 × 12分の1 = 250万

07法定相続分2

前回に続き、法定相続分についてです。

法定相続人法定相続分
配偶者と子配偶者は2分の1子は2分の1
配偶者と親配偶者は3分の2親は3分の1
配偶者と兄弟姉妹配偶者は4分の3兄弟姉妹は4分の1
配偶者のみすべて
子のみすべて
親のみすべて
兄弟姉妹のみすべて

法定相続分の問題

さまざまなパターンの法定相続分です。

被相続人に配偶者がなく、子、親、兄弟姉妹が相続人である場合、子、親、兄弟姉妹のそれぞれが相等しく均分した相続分になります。ただし、父母の一方のみが同じである兄弟姉妹の相続分は、父母どちらも同じである兄弟姉妹の相続分の2分の1です。

配偶者だけが相続人である場合、配偶者が相続財産のすべてを相続します。被相続人に、伯叔父母や従兄弟姉妹がいても配偶者だけが相続人になります。

身分関係が重複する場合の相続分

実親が嫡出でない子を養子としたり、あるいは祖父が孫を養子にする場合には、親子間または祖父と孫間という血縁関係があるうえに、養親子という法定血族関係が重複しています。また、配偶者の一方が、他方の父母の養子となった場合には、兄弟姉妹という血縁関係のほかに、配偶者という身分関係が重なっています。

このような場合に、相続が開始すると2つの身分を持つ相続人は、2つの地位に基づく相続が発生し、つまり二重相続になります。二重相続はケースによって問題が異なります。二重に相続したり、一方を相続したりと異なるということです。

重複する相続の例1

被相続人の長女の子(被相続人の孫)が、被相続人の養子である場合

長女が被相続人の死亡前に亡くなったとき、その子は養子としての相続分を当然に取得します。また、亡くなった母親の代襲相続人としての相続分も取得します。

重複する相続の例2

実親が非嫡出子を養子とした場合

親が死亡した場合、養子は非嫡出子の身分が消滅します。養子としての相続分のみを取得します。

重複する相続の例3

婿養子である夫が他方の父母の養子となった場合

養父母が亡くなった後、婿養子が亡くなり、実父母もすでに亡くなっていて、子どもがいない場合、妻は妻としての相続分のみを取得し、兄弟姉妹としての相続分は取得しないというのが実務の扱いです。つまり、妻の相続分と兄弟姉妹の相続分を重複しないという理解です。

法定相続分と登記

被相続人Aの共同相続人B・C

被相続人Aの相続財産である不動産を、Bが勝手にBの単独所有名義の登記をしたうえに、その不動産を第三者へ売却し、第三者の所有権移転登記をしました。この場合、共同相続人Cは、登記がなくても自己の相続した持分2分の1を第三者に主張することができます。これは、共同相続人Cの持分に関する限り、無権利の登記で、登記の公信力がないため、第三者も共同相続人Cの持ち分の権利を取得することができないと判例があります。

代襲相続人の相続分

相続人たるべき子または兄弟姉妹が、相続開始前に死亡したり、相続権を失ったりした場合に、その者の子または直系卑属(子・孫など)によって代襲されます。兄弟姉妹の代襲相続人は、直系卑属ではありません。兄弟姉妹の子すなわち、被相続人の甥姪です。

子の代襲相続人の相続分

子の代襲相続人となる直系卑属の相続分は、その直系尊属に当たる被代襲者が承継する相続分と同様です。代襲相続は、被代襲者の死亡または相続欠格・廃除の相続権喪失によって、その直系卑属が不利益を受けないようにする規定です。したがって、代襲相続人の相続分は被代襲者が承継するべき相続分と同様であるべきとされました。

代襲相続人が一人の場合、その者は被代襲者の相続分をそのまま承継します。代襲相続人が複数人いる場合は、各自の相続分は被代襲者が承継するはずだった部分についての法定相続分を相続することになります。

08相続分指定

代襲相続人の相続分

第901条
1.第887条第2項又は第3項の規定により相続人となる直系卑属の相続分は、その直系尊属が受けるべきであったものと同じとする。ただし、直系卑属が数人あるときは、その各自の直系尊属が受けるべきであった部分について、前条の規定に従ってその相続分を定める。
2.前項の規定は、第889条第2項の規定により兄弟姉妹の子が相続人となる場合について準用する。

相続人となるはずだった親が死亡し、相続欠格や廃除により相続権がなくなり、子が代わって相続権を持つ場合、子の法定相続分は親が持つはずだった法定相続分を承継します。ただし、子が複数いる場合は、親が引き継いだ法定相続分を均分します。また、本来相続人となるはずだった兄弟姉妹が死亡し、相続欠格や廃除により相続権がなくなり、その子(被相続人からすると甥姪)の法定相続分は、親(被相続人からすると子)が持つはずだった法定相続分を承継します。ただし、子が複数いる場合は、親が引き継いだ法定相続分を均分します。

遺言による相続分の指定

第902条
1.被相続人は、前二条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。条の規定に従ってその相続分を定める。
2.被相続人が、共同相続人中の一人若しくは数人の相続分のみを定め、又はこれを第三者に定めさせたときは、他の共同相続人の相続分は、前二条の規定により定める。

被相続人は、法廷相続人にかかわらず、遺言書に各相続人の相続分を指定したり、その指定を第三者に委託することができます。ただし、相続分の指定をしたり、第三者に指定を委託したりしても、遺留分については侵害することができません。また、被相続人が共同相続人の一部の人の相続分のみを指定したり、第三者に指定させたりした場合は、残りの相続人の相続分は法定相続分の規定によって定めます。

本条は、遺言による相続分の指定について規定しています。被相続人が相続分を指定する他にも第三者への委託をすることも可能です。『遺言で第三者への委託ができる』というより、第三者が相続分を指定する方法の定めがない殿です。委託された第三者が、指定を引き受けるかどうか不明にしたままの場合、相続人は相当の期間を定めて催告することができます。その期間内に指定がなければ委託は失効し、委託を引き受けた第三者が相続を指定しない場合も失効します。

指定をした際の効力は、被相続人による指定の場合、死亡のときを効力の開始とし、第三者による指定の場合、相続開始時にさかのぼって効力が生じます。

相続分指定があっても、それによって具体的相続分が確定するのではなく、第903条の特別受益の持ち戻し、第904条の2の寄与分が影響するためです。特別受益に関しては、持ち戻し免除の意思表示が認められていますので、相続分指定の意思表示があった場合には、原則として持ち戻し免除の意思表示も合ったと解釈されるでしょう。一方、寄与分には持ち戻しの免除の意思表示がないため、寄与分が認められる場合には、条文の具体的相続分は指定された割合とは異なることになります。

なお、相続財産のなかの特定財産を特定の相続人に与えるという旨の遺言がされた場合のことであり、その相続財産の価値が法定相続分によって算定される額を超えるときには、相続分の指定を含む遺産分割方法の指定であることを前提にした判例があります。

相続分の指定がある場合の債権者の権利の行使

第902条の2
被相続人が相続開始の時において有した債務の債権者は、前条の規定による相続分の指定がされた場合であっても、各共同相続人に対し、第900条及び第901条の規定により算定した相続分に応じてその権利を行使することができる。ただし、その債権者が共同相続人の一人に対してその指定された相続分に応じた債務の承継を承認したときは、この限りでない。

本条は、平成30年の民法改正において新設されました。基本的にはこれまでの判例の準則を明文化したものです。本条は、相続分の指定があった場合でも、相続債権者は各共同相続人に対し法定相続分の割合に応じて分割された債権を行使できることを定めています。

被相続人による最後の意思による処分の効力は、相続債権者には当然およばないことを前提にしています。法定相続分よりも小さい相続分を指定された共同相続人が法定相続分に応じた相続債務を弁済した場合は、共同相続人の間で求償の問題として処理がされます。

本条の但書は、相続債権者が相続人の一人に対して、その指定された相続分に応じた債務の承継を認めた場合には、それ以降のさ権利行使は指定相続分に応じたものになる旨を定めています。債務の承認は共同相続人のうちの一人にすれば共同相続人全員に対して効力を生じるという趣旨です。認められた共同相続人が他の共同相続人に対してその事実を知らせなかったことによって、他の共同相続人がその者の指定相続分を超えた額の弁済をした場合には、相続債権者に対する不当利得返還請求権が成立します。

09配偶者への特別受益・寄与分

配偶者への特別受益

民法第903条4項では、婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が他の一方に対し、その居住の用に供する建物またはその敷地について遺贈または贈与をしたときは、当該被相続人はその遺贈または贈与について、持ち戻し免除の意思表示がされたものと推定すると規定されています。

特別受益である贈与が一定額を超えると、相続分がマイナスになる相続人がでてしまうことがあります。この場合、マイナスになった相続人(超過特別受益者)の相続分はゼロとして扱われるにとどまり、払い戻しは要求されません。問題は、残りの共同相続人間でどのように処理をするかです。超過特別受益者を除いたそれぞれの共同相続人の具体的相続分を分子とし、それらの総和を分母として算出される率分を、第903条によって算出される具体的相続分(率)とする見方が有力です。

ある財産が、特別受益にあたることの確認の訴えが適法であるか、また具体的相続分の価額またはその割合の確認が適法であるかが争われることがありますが、判例はいずれについても不適法であるとしています。

寄与分

相続財産の維持や財産増加に寄与した者が相続人のなかにいる場合、その寄与を相続額に反映させようとする寄与分の制度があります。寄与分は相続分の調整であって、相続財産に潜り込んでいる他者の財産を確保するために、他者に物件的請求権や不当利得返還請求権を与えるものではありません。寄与分の制度は、それらの権利が認められるほどではない寄与にも相続分の操作によって一定の意義を与えるることです。

特別受益の持ち戻しと寄与分の両方が生じる場合がありますが、同時適用説、つまり持ち戻しの操作と寄与分の操作を同時にするという考えが有力です。

民法に規定する寄与分は、相続人による寄与であることを要します。次は特別の寄与であることです。寄与の典型は、被相続人の事業への労務の提供または、財産上の給付、被相続人の療養看護ですが、これらに限られません。寄与によって、被相続人の財産の維持または増加があったことが重要ですが、その維持または増加は現存していなければならないということはありません。

寄与分は、相続開始のときの財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることはできません。遺贈は遺留分によって制約されます。寄与分と遺留分の関係は、明示的に規定されていません。

寄与分は、共同相続人間の協議で合意がされない場合は、家庭裁判所が定めます。寄与分は、遺産分割における財産の取得割合に直接影響をおよぼす可能性が高いので、家事審判で決定することが実体験について裁判を受ける権利を保証する憲法に違反しないかが問題になりますが、判例では、寄与分を定める審判は本質的に非訟事件であるとして、合憲としています。

10共同相続における権利の承継の対抗要件

第899条の2
1.相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第901条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。
2.前項の権利が債権である場合において、次条及び第901条の規定により算定した相続分を超えて当該債権を承継した共同相続人が当該債権に係る遺言の内容(遺産の分割により当該債権を承継した場合にあっては、当該債権に係る遺産の分割の内容)を明らかにして債務者にその承継の通知をしたときは、共同相続人の全員が債務者に通知をしたものとみなして、同項の規定を適用する。

本条は、2018年の相続法改正によって新設されました。相続を原因として権利の変動における対抗要件についてと、その権利が債権である場合の取り扱いを定めています。

相続人は法定相続分については登記なくして第三者に対抗することはできますが、遺産分割により法定相続分を超える不動産を取得した相続人は、登記をしないと第三者に自己の権利を対抗できないとされました(最三小判昭和46年1月26日)。一方で、相続分の指定や遺産分割方法を指定した遺言による権利変動の場合には、法定相続分を超える不動産を取得した者は、登記なくして第三者に対抗できるとされてきました(最二小判平成14年6月10日)。

しかし、相続を原因とする権利変動についての扱いは、遺言の有無や内容を知ることのできない相続債権者や被相続人の債権者に不測の損害を与える恐れがあります。そこで、相続法改正によって本条が新設され、遺産分割による場合だけではなく遺産分割方法の指定や相続分の指定の場合にも、権利変動によって利益を受ける相続人は対抗要件を備えなければ、法定相続分を超える権利の取得を第三者に対抗することができません。

債権の承継

相続を原因とした権利変動により法定相続分を超える債権が承継されたとき、民法467条の定める対抗要件を備える方法によると、債務者が承諾をしない場合、共同相続人全員からの通知がされない限り対抗要件を持ちません。これを緩和するために本条2項は受益相続人からの通知によって対抗要件のを認めることにしています。

動産の承継

動産について本条1項が適用されることになっており、法定相続分を超える分については引き渡しを受けなければ第三者に対抗することができません。そのためには、引き渡しによって直接不利益を受ける他の共同相続人の協力が求められます。しかし、共同相続人は対抗要件を備える義務を負わないとされていますので、任意の協力を得られないときを除いて、どんな措置も設けられていません。

11特別受益の相続分

特別受益の相続分

第903条
1.共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
2.遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
3.被相続人が前2項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。
4.婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第1項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。

本条は、相続による贈与または遺贈がある場合に、原則としてその分を相続による取得から差し引く形で相続分を修正し、共同相続人の総取り分をできるだけ平準化しようとした趣旨です。具体的には、下記の通りです。
※遺贈や生前に贈与を受けた者を特別受益者と呼びます。

特別受益者がいる場合、遺贈や贈与は被相続人が所有していた財産として、一度財産に持ち戻します。つまり、相続財産に遺贈や贈与の財産を加算したものになります。この合計に基づいて、遺産分割をして各相続人の相続分を算出します。遺贈や贈与を受けた相続人の最終的な相続分は、算出した相続分から遺贈や贈与の金額を差し引いた分になります。

例:特別受益者がいる場合の相続分

相続財産5,000万を遺し、夫Aが死亡
妻B、子C・Dが相続人で、子Dが500万の特別受益を受けていた

遺産5,000万円を法定相続分で分割すると、妻Bが1/2の2,500万、子CとDとでそれぞれ1,250万円が相続されます。すると、特別受益を受けていた子Dは、1,250万+500万で1,750万を取得したことになります。不均等と感じる共同相続人がいるかもしれません。

このような場合に、特別受益500万を遺産5,000万に持ち戻して計算します。したがって、遺産を5,500万として計算するのです。

この場合、妻Bが1/2の2,750万、子CとDとでそれぞれ1,375万円が取得することになります。子Dは、結果1,375万ー特別受益500万で875万が相続分ということになります。

特別受益者が受けた遺贈や贈与の額が、上記計算の相続分よりも多くなる場合は、被相続人が亡くなったときの遺産は相続分ゼロということになります。

被相続人が特別受益の持ち戻しを免除する旨の遺言書を遺していたり、すでに贈与を受けた相続人に対してさらに遺産を相続させたいという意思表示がある場合は、その遺言が優先されます。しかし最低限担保される遺留分は侵害されません。

特別受益の対象

生前の贈与がなんでも特別受益にあたるというわけではありません。特別受益にあたることが明らかなのは、遺贈と婚姻・養子縁組のため、もしくは生計の資本としてされた贈与です。婚姻・養子縁組のための贈与は、持参金・支度などで、結納や挙式の費用は含まれません。生計のための資本という贈与は、扶養義務の範囲を超えるもので、金銭や不動産などさまざまです。

12特別受益財産の範囲と特別受益持戻免除の意思表示

特別受益財産の範囲

遺贈された財産

目的を問わずして、すべて特別受益財産として持ち戻しの対象になります。遺贈された財産は、相続開始の時点では相続財産に含まれているもので、贈与された財産のように加算する必要はありません。

婚姻、養子縁組のための贈与

特別受益財産の範囲に含まれます。持参金、支度金など、婚姻・養子縁組のための支度の費用が典型的なものです。結納金、挙式費用が、婚姻、養子縁組のための贈与に含まれるかについては争いがあります。
挙式費用については、通常の挙式費用は含まれないとする考えが有力です。この考えには、挙式は婚姻、また養子縁組をする当事者のためというよりも、親の社交上の出費たる性質が強いことを理由とする見解があります。

生計の資本としての贈与

生計の資本としての贈与とは、子どもが独立する際に居住用の宅地を贈与したり、農家なら農地を贈与したりというのが典型的なものですが、これらに限らず、広く生計の基礎として役立つような財産上の給付が該当するとされています。

また、日本の教育水準をみても高校や大学の教育を、義務教育の場合に準じて考えることができると言えます。このような高等教育の費用は、被相続人の生前の資産収入や社会的地位から、その程度の教育をするのが普通であるという場合には、学費の支出は親の当然なすべき扶養の範囲として特別受益に該当はせず、それを超えた身分不相応な学費のみが特別受益となると考えられます。

生命保険金請求権

被相続人からの生前贈与あるいは遺贈には、条文の分離上該当しません。しかし、被相続人が保険料を支払った場合、保険金請求権は保険料の対価である実質があり、遺贈や死因贈与のように財産の移転(無償処分)とみられて、その形式にとらわれずに、遺産分割に際して、共同相続人の衡平をはかるため、持ち戻しの対象にすべきという考えもあります。

なお、最高裁判所決定平成16年の判例では、養老保険契約にもとづく死亡保険請求権は、被保険者が死亡したときにはじめて発生するものであり、保険契約書の払い込んだ保険料と等価関係に立つものではなく、被保険者の稼働能力に代わる給付でもないため、実質的に保険契約者または被保険者の財産に属していたとせず、相続財産であることを否定し、死亡保険金請求権の特別受益性を原則として否定しました。

死亡退職金

死亡退職金などの遺族給付は、給料の後払いのような性質があることと、持ち戻しを否定すると共同相続人間の実質的衡平が難しくなることなどを理由に、生命保険金請求権と同様に、その特別受益性を肯定しています。

特別弔意金につき、遺族の生活保証的性格を有することを理由に、特別受益性を肯定したのがあります。また、退職金、役員功労金につき、いずれも被相続人の生前の労働、貢献に対する対価であり、特に退職金は賃金の後払いのような性質があり、その実質は遺産に類似するといえ、共同相続人間の公平をはかるために、特別受益財産とみるのが相当であるとした判例があります。

特別受益持戻免除の意思表示

特別受益財産が持ち戻されるのは、共同相続人間の衡平をはかる目的と、それが被相続人の通常の意思に合致していると推測されることからです。被相続人がこれと異なる意思、つまり持戻し免除の意思を表示したときは、遺留分を侵害しない限りこれに従うことになります。この持戻し免除の意思表示は、被相続人に対し、特定の相続人に相続分の他に特に利益を与える権限を認めたものであって、共同相続人間の衡平より被相続人の意思を優先させた、ということになります。

持戻し免除の意思表示の方法は、特に定められていません。生前行為か遺言で記すかなど、定められていません。被相続人が特定の相続人に、相続分のほかに、財産を相続させる意思があったことを推測させる事情がある場合に、黙示の持戻し免除の意思表示が認められます。
また、被相続人が特定の相続人に生前に贈与をしたにもかかわらず、この贈与に言及することなく、遺言で相続分を指定した場合には、被相続人は持戻し免除の意思を表していると考えてよいでしょう。

遺言で持戻し免除の意思表示がされている場合に、撤回が許されていることは明らかです。しかし、生前行為によって持戻し免除の意思表示を撤回できるかについては少々疑問がありますが、被相続人に遺産の自由処分権が認められていることからすれば、自由にできると考えられています。

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