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相続は越谷の美馬克康司法書士・行政書士事務所 相続ガイド《相続放棄とは》

相続越谷春日部の美馬司法書士行政書士(せんげん台駅1分/土日祝営業)

相続放棄

被相続人の財産を一切引き継がず、相続人の立場でなくなることを相続放棄といいます。被相続人から引き継ぐ財産は、プラスの財産だけでなく負債などのマイナスの財産も対象となります。マイナスの財産を引き継がないようにするために、相続人の立場を捨てる相続放棄の手続きが必要になります。相続開始を知ってから原則3か月以内に申述しなければなりませんので、できるだけ早く取り掛かることが重要です。

01相続放棄とは

相続財産は、必ずしも相続をしなければならないということはありません。被相続人の財産を相続する権利のすべてを放棄することができます。相続放棄は、はじめから相続人とならなかった、とみなされるようにする意思表示です。『私は相続しません』と誰かに伝えたり、宣言したりすることではなく、相続権利を放棄する法律上の行為です。

かつて明治民法では家督相続を義務づけられていましたが、1947年の家族法改正により家督相続が廃止され、相続人に当然相続主義による不利益を回避できるよう相続放棄が認められました。

相続放棄は、自由であり、相続債権者に損害が及ぶとしても権利の濫用とはなりません。また、相続放棄は財産を相続する権利のすべてを放棄するため、たとえば土地は相続して借金は相続しない、という条件をつけることはできません。プラスの財産とマイナスの財産の両方を放棄することになります。

相続放棄の方式

第938条 相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。

相続放棄は、意思表示をするだけではなく、家庭裁判所に所定の手続きをしなければなりません。上述したように、相続しない意思を発する行為ではなく、法的な手続きをして家庭裁判所から認めてもらうことで成立します。

被相続人が亡くなり、自分に相続があることを知った時点から3ヶ月以内に申述しなければなりません。この期間が経過した場合や、相続財産の全部または一部を処分した場合には、単純承認(相続財産をすべて相続すること)にしたこととなり、放棄をすることはできません。

相続開始の前(被相続人が亡くなる前)に相続放棄をすることはできません。被相続人または共同相続人との間で相続放棄の契約をすることもできません。相続開始となってはじめて相続放棄をすることができます。

なお、相続放棄を申し出ることは一度限りで、家庭裁判所から認めてもらえなかった後に再度申述することはできません。

相続放棄の申立権者

未成年者や被保佐人、被補助人が相続放棄の申し立てをするには、法定代理人(親権者や補佐人、補助人)の同意が必要です。未成年者や被保佐人、被補助人に代わり法定代理人が相続放棄を申述することもできます。

相続放棄の取り消し・無効

相続放棄の撤回はできませんが、相続放棄の取り消しは認めらる場合があります。未成年者や被保佐人、被補助人が法定代理されず、または同意を得ないで申述した場合や詐欺・強迫によって申述した場合、後見人が後見監督人の同意を得ずに申述した場合に、家庭裁判所に申述することができます。

相続放棄の無効に関する規定はありませんが、実質的要件を欠く場合に、訴訟によって無効を主張するケースがあります。特段の事情によって申述書に自署がなく記名押印はあったという判例では、相続放棄が有効だと審判されています(最三小判昭和29年12月21日)。

二重資格の放棄

同一人が相続の権利を二重に持つ場合、それぞれの資格を選択して放棄できるかという問題があります。相続資格の重複とは、たとえば被相続人の弟が養子に入っているという場合に、養子という立場では放棄して、弟という立場では相続をするというケースです。

かつては被相続人との続柄が要求されていませんでしたが、現在は相続放棄の申し立ての際に続柄の記載が必要なので、相続放棄をする立場が明らかになることから、他の立場での相続は有効とされています。

02相続放棄の効力と管理

相続の放棄の効力

第939条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。

相続放棄をした人は、相続開始時点にさかのぼり、そもそも相続人ではなかったという扱いになります。共同相続人がいる場合は、相続放棄によって共同相続人が減るため他の共同相続人の法定相続分が増えることになります。

相続放棄をした人が唯一の相続人であった場合は、次順位の相続人に相続権が移ることになりますが、相続放棄をした場合の代襲相続は認められません。

代襲者の相続権利については、こちらで詳しく解説しています。

相続放棄の効果は、登記などの対抗要件の具備にかかわりなく絶対的です。

相続の放棄をした者による管理

第940条
1.相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。
2.第645条、第646条、第650条第一項及び第二項並びに第918条第二項及び第三項の規定は、前項の場合について準用する。

本条は、相続放棄をした者の相続財産の管理義務について規定しています。相続放棄をすると、相続の開始時点にさかのぼり、相続人とならなかったものとみなされますが、それでも放棄によって相続人となった者が相続財産の管理をはじめることができるまでの間は管理義務が生じます。次順位の相続人が相続をすることになったとしても、すぐに管理ができるとは限らないためです。

相続人は、放棄をするまでは自分の財産におけるのと同じように注意をもって管理をしなければなりません。さらに、相続放棄後も他の相続人が相続財産を管理できるようになるまで、同様に管理を継続しなければなりません。

そして本条二項では、相続放棄をした人が相続財産を管理する場合は、第645条、第646条、第650条第一項及び第二項並びに第918条第二項及び第三項の規定に従わなければならないことを規定しています。

第645条 受任者は、委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければならない。

第646条
1.受任者は、委任事務を処理するに当たって受け取った金銭その他の物を委任者に引き渡さなければならない。その収取した果実についても、同様とする。
2.受任者は、委任者のために自己の名で取得した権利を委任者に移転しなければならない。

第650条
1.受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。
2.受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる債務を負担したときは、委任者に対し、自己に代わってその弁済をすることを請求することができる。この場合において、その債務が弁済期にないときは、委任者に対し、相当の担保を供させることができる。
3.受任者は、委任事務を処理するため自己に過失なく損害を受けたときは、委任者に対し、その賠償を請求することができる。

第918条
2.家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、いつでも、相続財産の保存に必要な処分を命ずることができる。
3.第27条から第29条 までの規定は、前項の規定により家庭裁判所が相続財産の管理人を選任した場合について準用する。

第645条、第646条、第650条第一項及び第二項並びに第918条第二項及び第三項の規定の受任者とは、相続放棄をした人のことで、相続財産の管理を任された人です。委任者は、相続人のことで、相続財産の管理を任せた人です。

相続放棄をした者は、委任者への事務処理状況の報告義務や事務処理にあたって受け取った金銭などの委任者への引き渡し義務を負う傍ら、委任者に対して事務処理に必要な費用や利息の返還請求権や、事務処理のために発生した債務の弁済請求権を持ちます。

また、家庭裁判所は相続財産の保存に必要な処分を命じたり、管理人を選任したりすることができます。裁判所によって管理人が選任されたときは、受任者の管理義務は消滅すると解されています。

03相続放棄の注意点

相続放棄の期限に注意

相続放棄をする場合に、もっとも注意が必要なのが期限です。相続人が相続の開始を知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述し、受理されなくてはなりません。

申述書の提出は共同相続人の判断は無関係で、当然申述にどなたかの承諾なども必要なく、本人単独ですることができます。ですから、共同相続人の判断や意思を待つ必要もありません。

相続放棄をするための3ヶ月の期間を熟慮期間といいますが、熟慮期間内に相続財産などの調査をして、相続を承継(単純承認、限定承認)をするか相続放棄をするかの判断ができない場合も起こりえます。そのような場合には、家庭裁判所に申し立て、熟慮期間の伸長をすることができます。

何もしないで3ヶ月を経過することに注意

相続放棄もせず、限定承認もせず、3ヶ月を経過してしまうと、単純承認とみなされます。つまりプラスの財産もマイナスの財産もすべてを承継することになります。

単純承認をした後に負債が見つかった場合には、弁済責任は単純承認をした相続人にあります。したがって、被相続人に夫妻があったり、連帯保証人であることがわかった場合には、相続を承認するかを慎重に判断しなければなりません。

特に連帯保証人であるという事実は、なかなか知ることが難しいケースも多いです。生前、そのような噂があったり、連帯保証人をしたことがある過去があったりする被相続人なら、念入りに調査する必要があります。

単純承認とみなされるケースに注意

相続人が相続財産の全部または一部でも処分をした場合や相続人が相続放棄または限定承認をした後に、債権者を害することを知っているにもかかわらず、相続財産の全部または一部を隠匿したり、消費をしたり、故意に相続財産の目録に記録をしなかった場合も単純承認とみなされてしまいます。

処分という行為は、遺産分割協議を行ったり相続財産を売却したり、預貯金を払い戻して使用したりというものが挙げられます。

単純承認とみなされてしまうと、家庭裁判所が受理をした相続放棄や限定承認が無効となる場合もありますので注意が必要です。

相続放棄をした次順位への配慮に注意

被相続人が抱えていた借金を理由に相続放棄をするケースがもっとも多いですが、相続放棄をした後の次順位にあたる相続人への配慮が必要になる場合もあります。

自分が相続放棄をすることで、新たに相続人になる方が借金がある事実を知らずに相続する場合があります。第一順位の相続人(直系卑属)が相続放棄をすると次順位は直系尊属で、さらに次順位は兄弟姉妹や甥、姪が法定相続人となりますから、ご自身のみならずご家族全員で相続放棄をすることになるかもしれません。

相続放棄は確実な手続きを。

前述したように、相続放棄は3ヶ月という熟慮期間を伸長することもできます。しかし、伸長できるか否かは、条件次第であり、確実に伸長できるわけではありません。

確実に相続放棄をするには3ヶ月以内に手続きをすることですから、早急に負債の調査を行い、相続放棄の手続きをすることをおすすめします。

04相続放棄をすることが多いケース

相続放棄をするケースはさまざまです。

  • 続する財産より借金の方が多そうで、相続したくない
  • 財産と借金の差がよく分からない
  • 親が亡くなったが、多額の借金がある
  • 亡くなった親の借金の督促が届いた
  • 親の住宅ローンをどうしたらいいか相談したい
  • 亡くなった親が借金の連帯保証人になっていた

このようなご相談が多いのですが、プラスの財産があっても相続放棄をされる方もいらっしゃいますし、借金があっても相続放棄をされない方もいらっしゃいます。それぞれのご事情で、相続放棄のケースはさまざまです。

今回は、相続放棄をすることが多いというケースをご紹介いたします。

相続放棄をすることが多いケース

被相続人に多額の借金があるケース

プラスの財産よりも借金などのマイナスの財産が多いことが明確である場合に、相続放棄をされるケースが多いです。また、判明している範囲ではプラスの財産の方が多いが、さらに調査を進めることでマイナスの財産が多くなる可能性が高いと思われる場合は相続放棄をされるケースが多いです。

その時点でプラスの財産が多いと思っていても、後からマイナスの財産が出てきては、取り返しのつかないことになってしまう恐れもありますので、十分に身辺を確認する必要があります。

被相続人が保証人・連帯保証人であるケース

被相続人が保証人や連帯保証人になっている場合、その立場も相続されます。債務者が借金の返済ができなくなったとき、返済義務が保証人や連帯保証人の相続人に生じるということです。

この保証人という立場は、実際に明るみに出ず、被相続人が保証人になっていた事実や相続人が保証人という立場を相続している事実を知らないことも多く、身辺をよく確認しておかなければなりません。多くの場合、保証内容を確認して相続放棄をされています。

相続財産を特定の人などに相続をさせたいケース

特定の相続人に相続財産をすべて相続させたいというご相談もあります。相続人が複数ある場合は、通常の手続きよりも相続放棄をすることで、手続きに関わる手間や時間、費用を軽減できる場合もあります。

相続人と疎遠であるケース

遠い繋がりや疎遠である関係から、相続放棄をされるケースもあります。不仲であるため、あまりかかわりを持ちたくないので相続放棄をしたい、というご相談もあります。このような理由でも相続放棄は可能です。相続人ではなかったとみなされますので、遺産分割協議に参加する必要がなくなります。

相続問題を避けるケース

相続問題に巻き込まれたくないという理由から相続放棄をされるケースもあります。特に親族などが多く、相続財産の分配での揉め事を避けるために相続放棄を選択したいというご相談もあります。相続人ではなかったとみなされますので、遺産分割協議に参加する必要がなくなります。

後々発覚する借金の不安を考慮するケース

被相続人に財産がないという場合も、念のために相続放棄をするケースもあります。プラスの財産がないために、そのまま自然と相続人となっていたら、後から借金の存在が判明し、結果マイナスの財産が手元に残るということを懸念し、相続放棄をしておきたいというケースです。プラスの財産がなく、相続を承継しても放棄しても何も変わらないという場合は、相続放棄をしておくことが有効という例です。

相続放棄によって相続人がいなくなったらどうなる?

相続人全員が相続放棄をしたために、相続人が誰一人存在しない状態になった場合はどうなるでしょうか。

相続人が誰もいなくなった財産は、相続財産法人として法人化されると第951条で規定されています。

第951条 相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。

相続財産法人は相続財産や権利義務の帰属主体となる存在で、登記などの手続きは不要で自動的に法人化されます。法人化されたマイナスの財産は、債権者が相続財産法人に返済を請求をするということではありません。相続財産を持つ法人というより、相続財産そのものが法人だという考え方がわかりやすいかもしれません。

そして、家庭裁判所は相続財産管理人を選任します。相続財産管理人の多くは弁護士が選任されます。相続財産管理人は、本当に相続人がいないかを調査し、相続財産の代理人として精算手続きを行います。そこでもし財産が残った場合は国庫に帰属することになります。

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